弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

目には見えないデート

月は、昨夜のうちにほとんど欠けなく輝いていて、「これはまた夜桜日和」と、夫と青連院の夜桜を見て来ました、私は桜よりも寺院内の壁に描かれた孔雀の絵のなかの蝶々に見とれてしまいました。 白地に黒い斑点が広がるモンシロチョウの羽根が、一枚は大きく…

満開大吉

窓の外の木蓮はすっかり散って、素っ裸な枝が青空を突き刺す。駐車場には茶色く焦げた花びらの絨毯ができていて、どちらからともなく「あした、うちらで掃除する?」なんて話していたら、翌朝、ホウキが地面をする音で目が覚めた。 パジャマのままそっとベラ…

桜の賀茂川と、あの日の右手

3日前に一気に気温が上がり、朝方、うぐいすが鳴くようになった。どうもキッチン窓の外の生垣に忍んでいるらしくて、8時ごろにもなると二羽の声が重なりだす。 親子なのか。声の高い方は、鳴いてるというより”出してる”って感じ。つまづいたり、飲み込んだり…

はじまりは木蓮の香り

京都で暮らし始める私たちを迎えてくれたのは、まっ白な満開の木蓮。新居の出窓を開けたとたん、品のいい甘い香りが、雨の音とともに入ってきた。たちまち部屋中が木蓮の香りでいっぱいになって、夫と2人で、目一杯吸い込んだ。 「すごいね、歓迎されてるみ…

顔が生意気な女たち

怒鳴るシリーズ(1)(2)(3)を書いたあと、そもそも自分が怒鳴られやすかったのはキャラクターに原因があったのでは説が浮上して、そこんとこをもうちょい掘ってみることにした。 恵比寿アトレ西館のビストロ・シロノニワにて、食べ放題のナタデココと…

さよならドコモタワー、いい恋を

東京生活の最後、夜、いつも見ていたのは東京タワーでもスカイツリーでもなくて、ドコモタワーだった。 たった8ヶ月だけ住んだ参宮橋の3階建マンションは高台にあってランドスケープ。右手には真っ黒な代々木公園と明治神宮の森、向こうに森ビル、東京タワ…

代々木公園の微熱

手先も足先も冷たい、と気づいたら最後。デスクトップから目を離したとたんに脳みそが揺れて、「あ、あかんやつや」と立ち上がったらもっと揺れた。寝ればいいのに、猛烈に「温まらなくあ!」と思ってお湯にお湯を溜める。案の定、湯船に浸かったらあっとい…

生理痛と愛のスタンプ

子宮にキュウっと収縮するような痛みが走って、目が覚めた。腰が重だるくて、つま先が冷たい。夫に「ゆ、湯たんぽ」と懇願すると、せっせとお湯を沸かしてくれる。まどろみと腹痛のはざまでぼんやりしていると、足元がもぞっとして、暖かくなる。「おかゆと…

渋谷、脳内検索

目がさめると、キッチンから水がじゃ〜〜っと流れる音がした。あれ、洗ってないお皿なんてあったっけ。音の動きをたどると、どうやら夫がお米を研いでいる。夫? ああ、そっか、家にいるんだ。さっきまで切り立った海岸の草むらに身を潜めて、追っ手が近づい…

新宿駅で、最後のプレゼントを

朝はかなり神経が立っていて、ギリギリまで布団から出なかった。いよいよ東京に帰るのか。そう思うと緊張した。我が家に帰ること自体は楽しみなのだけど、人の多い東京駅と新宿駅を経由するプロセスを想像すると、どうにも気が重い。夫に部屋の掃除を手伝っ…

冬が死んだ。(大沢温泉最終日)

2月28日、春が生まれた。 山の上を見上げると星がともり、木々の合間に月が光った。タオルを振り回しながら別館「菊水館」へ向かう橋を渡ったとき、風の匂いが変わったのに気づいた。いつか空から注がれた呼び水が、土の底まで染み渡り、乾いた風となって夜…

ピカチュウ化する夫とチンピラ妻(満月更新)

そもそも、どうして一人になろうと思ったのかを考えてた。 数日前に夫が湯治場にやってきて、部屋に入ってきたとき、この人の身体から発せられてるビリビリした空気はなんだろう?と思った。実は電磁波に敏感な私はスマホのビリビリが辛くて触れられず、以来…