弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

17回目の引越し

いろんなこと忘れて生きてる、と思う。つい最近引越しをして、積み上げられた段ボールを見ていたら、ものすごい既視感に襲われた。はていったいこれまで何度引っ越しをしたんだろうと指折り数えたら17回。一人暮らししてる間に実家が移動した数を加えたら20…

「アーヤってまめさんですよね?」

✳︎スタジオジブリ新作「アーヤと魔女」が今夜19時半〜放送 「あ、世の中にはこんな面白い人がいるんだ」 ✳︎ たぶん私の人生で、最も衝撃だったのが、「まめさん」との出会いだと思う。 「まめさん」とは、鈴木家の長女。「耳を澄ませば」のカントリーロード…

バチェロレッテがとっても面白かったので

バチェロレッテを観た。や、バチェラーシリーズは全部見てたんだけど、や、どれも楽しかったんですけども。も〜萌子さん見てて楽しくて、久々リアリティーショーにハマりました。笑 以下、7話までのネタバレなのでご注意。 そして見ていて感じたことをつら…

お月さまとぽこちゃん

窓の外にみかん色の満月が、東山の向こうから登ってくるのが見えた。「いま琵琶湖あたり、きれいだろうねえ」なんていいながら、夫と夜の散歩に出た。オンラインで一通り仕事を終えたばかりの夫は、しゃべるのも早いし歩くのも早い。 私は先日、散歩中に土手…

差別の気持ちは誰もが持っている

現代を生きていて、 差別に加担せず生きている人なんていないと思う。どんなに素敵な友人や尊敬する人を思い浮かべても、 やっぱり一人も見当たらない。 私自身が、そうであるように。 例えば普段から愛に満ちた人が、SNSのタイムラインに「差別をやめようよ…

世界のすべてが見えるまで

たんぽぽ、よもぎ、しゃく、なずな、どくだみ。 早朝の誰もいない神社でお参りして、帰り道に何かしらつんで帰る。今朝はしゃくを味噌汁にいれて、もう半分をどっさりうさぎのぽこちゃんにあげた。二人と一匹、同じ朝ごはんをいただく。 窓から入る光が白い…

からだのかみさま

毎日スケッチやクロッキーをするようになったら、 2ヶ月で少しは描きやすくなってきた。 一度書いた小説のあのシーンやあのシーンを絵で描けるように、 もっともっとイメージを形にできるようになりたい。 散歩が楽しい。 何を描こうか、眺める世界のなかで…

やえちゃんのこときらいやってん

幼稚園のころ、クラスにちょっと派手で気の強い女子がいて、私はその子に嫌われてた。というか、引っ越しで園を去ることをみんなに知らせた数日後に突然呼び出されて 「うちやえちゃんのこと嫌っててん。ほんまごめんな」 って謝られて、その時私ははじめて…

父の死と再生と

父が亡くなったとの知らせを突然受けてから、怒濤の日々が過ぎていった。今日でやっと10日目になる。長い。すでに1ヶ月が経ったような気がしてびっくりする。 この間、私は父と、自分自身と、ひたすら向き合い続けていた。まず悲しみや別離の痛みと向き合い…

オリンピックの年までに東京を出ると決めていたこと

上京する直前、受験生だった私は中越地震で被災した。3度の直下型地震。たまたまお風呂に入っていたので、慌ててタオルで身体をふいて、なぜか英単語帳と化粧ポーチを持って外へ出た。2度めの大揺れがきて、アパートがプリンみたいにぐにゃぐにゃにしなった…

2019年総括ベイビー

年末年始にかけて一週間ほど、熊野にてキャンプ中。1月にも熊野でテント張って、5月は丸一ヶ月キャンプしてた。なんたって温泉がいい。どこもかしこも源泉かけ流し。冬は川を掘り起こした無料の巨大野天風呂まである。本州最南端だけあって冬でも温かい。那…

明るいとか暗いとかそんな単純じゃなくて

アメリカから帰国後、しばし新潟に滞在中。雪が降ってきた。紅葉がまだ終わりきらない山の上におしろいが振られて、光に照らされてとてもきれいで、毎日温泉に使って身体を癒やしながら、見惚れていた。 家にはネットがないので、仕事以外ではオフライン状態…

「途方もない懐かしさ」の正体

いってえなあ。 できればもう感動したくない。感動ってしんどい。 感動すると、胸の真ん中にある真っ赤な水風船が刺激されるとバンと弾けて、中から真っ赤な液体がドロドロ出てくる。溢れた感情が肝臓を痺れさせ、消化が追いつかずに今度は肺を上がってくる…

モクレン

今朝は山鳩が口笛する声で目が覚めた。一瞬、自分の体が山の中にでもあるのかと思った。台風が近づいているのか、風が湿っぽい。レースのカーテンが膨らんでしぼむ。ベランダの外いっぱいに茂る木蓮は、天に引っ張られているみたいにまっすぐ枝を伸ばしてい…

依存するのは悪いこと?

ふと思い出して「SEX AND THE CITY」を見返していた。大学生のころ、家の中が静かなことに慣れなくて、趣味と呼べるものも見つからなくて、寂しさを埋めるためによく観てた。今思えば、生きてること自体が不安!みたいだった当時の私にとって、キャリーたち…

生活から生えてくるアイデア

鈴虫にはいったい何種類いるんだろう。新潟では盆明けには鈴虫が鳴いていたけど、京都に帰ってきたらそもそも音色が違う。少なくとも平安京の人々が聞いていたのはこの音色なのかもしれない。こないだは満月がよく見えた。夫がベッドの位置を窓際に変えたの…

トランスからの自立

朝起きたら、どんなに面倒でも外へ出て、山辺の道を散歩した。神社で一人、深呼吸して、うろ覚えのラジオ体操して、杉の林の腐葉土に裸足を沈めて、「今日も文字通り地に足つけテイル、ワタシ」としっかり確認して家に帰る。もう毎朝納豆ご飯。ニュース見な…

あおり運転のニュースを見て

去年中古の車を買ったとき、よく行ってる神社で車祓いをした。京都ではしょっちゅうどこかしらの神社やお寺の守りステッカーを貼ってる車を見てたから、なんとなくやっておこう、それくらいの気分で。 お祓いが済んだ後、振り返った禰宜さんが、「最近はあお…

お祭りなんて大嫌い

山下清の長岡花火。大好きな絵。 急遽、台風めがけて新潟から京都へ帰ってきた。用事ができて。台風は一晩で過ぎ去って、今日は無事、五山の送り火が開催された。うちは割と北の方なので、どこの文字も、まるで山に印字された花火を見ているような迫力で見ら…

知らんおっさんに怒鳴られて

生まれて初めて、赤の他人に「ぶっ殺すぞ!」って怒鳴られた。「いい加減にしろ!ぶっ殺すぞ!」。深夜1時。相手は50くらいのおっさんで、顔が真っ赤になるほど酔ってた。お酒臭かった。そのとき私は38度の高熱でクラクラしてて、それなのに身の危険を感じて…

真夏の引力

7歳の時、新潟県の魚沼へ引っ越してきた。とにかく一面田んぼの海で、それまで暮らしていた関西とは空気の匂いが違った。新潟は土の甘い香りが濃厚で、特に夏は腐葉土の酸味を含んだような匂いが夜空に立ち上る。わたしの体には、この香りによって、深く刷り…

怒りの前のさみしさに

フランス・オーベルジュの、ゴッホのお墓近く。 このところ、移動が多い。1ヶ月のフランス滞在から帰ってすぐ、京都の自宅から友人らを訪ねに伊勢へ、さらに最近仲良くなった整体師の男の子を連れて天川の例大祭で能を観て、「さて、新潟の実家へ行こう」と…

ゴッホが最期に見た景色 vol.1

何気なく曲がった角の先で、男の人と目があった。背中を青白く燃やした、フィンセント・ヴァン・ゴッホの自画像だ。 パリのオルセー美術館で、ひとしきり印象派を堪能したあと、あまりに広い館内にちょっと疲れながら、ゴッホとゴーギャンの絵が飾られるフロ…

散らして結んで

本当に今年の春分あたりから、それまで予兆はあっても曖昧だった自分の立ち位置が、いきなり「世界のこっち側」に突き飛ばされた感覚がある。あんまりいきなりだったもので、それでももう突き進んでいく時間の中で、そっかこれは前に進んで行くしか、もう本…

私とあなたの点と線

一昨年の冬、かつて暮らしていた奈良の山奥の、大好きなイチョウの木のしたで、ある男の人と出会った。 私は子供の頃からずっと会話をしていたその木とお話をしながら泣いてた。そういう時は必ずと言っていいほど人が払われるのに、人が来るなんて不思議だな…

黒潮のラブレター

真っ平らに見える海で突然、氷山の一角に頭をぶつけた、みたいな衝撃だった。 熊野に来たのは、このところほっておいても掘り起こされるいろんな記憶から、一旦逃れて身体を休めたり、地に足つくように強化したいからだった。 熊野古道を歩いて、温泉に入っ…

黒潮の記憶

雨が降った。テントの中で聞く雨の音が好き。すぐそこで、岸壁に打ち付けられる波の音がする。太平洋を一周し、東シナ海の果てからやってきた黒潮は、紀伊半島を沿って北上する。 だけど1年半ほど前、黒潮は沖で大蛇行をはじめ、紀伊半島から離岸してしまっ…

地に足つけていたいの

朝の森でヨガを教えてもらったよ 友達はいつも私にないものを持ってる。それでいて私と似たところもある。だから参考になる。よく行く伊勢の洋服屋さんのお姉さんは、いつも明るくて人を巻き込む力があって、物事を進めたり形にしていくときはちゃんと腰を落…

翡翠色の湖 in台湾

台湾で地震があったと聞いて、ニュースをつけたらつい先日見たばかりの景色が流れた。いろいろな顔が浮かぶ。6日間の旅の中で、何人もの台湾人の人たちと触れ合った。夜の寺をウロウロしていたら、「ここを探してるんだろう!」となぜだかトイレに案内してく…

人はなぜ無償の愛を求めるのか

人は本質的に無償の愛を求める生き物だと思う。そして大人になるにつれて、そのような愛を求めることの非効率さを知る。だから、誰にも依存せず生きること、孤独の淵に立っても膝を折らないことを学ぼうとする。それこそが自立した大人の態度だと。 それでも…