弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

もうぼく拗ねちゃうゾ!

昨年、秋の初め頃まで順調に書いていた小説を、その後1日の日の入りが早くなるにつれて、まるでエネルギーダウンしたみたいに書けなくなっていった。身体のしんどさがどんどん増していった。10月ごろからブックライターの仕事で本を一冊書いていたのだけど、それが終わる頃には、身体そのものが思うようにいかなくなった。

 

カレンダーを見ながら、せめて冬至の頃には復活できたらいいな、と思いながら、それも焦りすぎなのか、よくわからなくなった。小説の編集さんは穏やかに「処女作のいいところは締め切りがないところです。存分に」となだめてくれる。うまくいえないのだけど、物語をわーっと書いているとき、知らぬ間にダラダラ泣いてたりして、右のお腹がどんどん痛くなり、呼吸がしにくくなる。それでもしばらく続けていたら、痛みは慢性的なものになった。

 

同時にPCを触るのがいよいよしんどくなってきた。ある時期から電磁波がめっきり苦手になり、まず電子レンジがダメになって、次はスマホを持てなくなった。触るだけでピリピリするの。しかも右手で触っているのになぜか左頭の後ろが感電したようにビリビリし出すの。せっかくMacBook Airなのに、外付けキーボードで茶濁して様子を見ているけれど、身体の嫌悪感はどうにも拭えなくなってしまった。

 

学生だった頃、会社員だった頃を思い出す。どうして、私はこう、徹夜とか飲み会とか、みんながやるようにはやれないのかな。だんだん腹が立ってきてこうも思う。ようスマホなんぞ触ってられんな。私からみれば、みんなおかしい。この「キーン」て音、本当に聞こえてないの? 私にだけ聞こえてるのが、時々悲しくてたまらない。てか、もう悲しいの通り越して意味不明。

 

一通り落ち込んだり恨んだりイライラしたりしたあと、身体をしっかり休めて、右腹の痛みを治すことに専念した。なんちゅうか、身体がもう一段、敏感になっていくのを感じていた。こういう時期は度々あった。嗜好品、人付き合い、仕事、居場所、食事。それまでなんともなかったのに、だんだんと受け付けないものが増えていく。

 

古着屋と古本屋に入れなくなり(身体が異様に重たくなるの)、デパートの地下にいられなくなり(なんでか知らんけど呼吸が浅くなる)、人混みに行くと後ではいたりする(これは結構前から)、つまり世界に対して感じるものの範囲が増えて、その中で平然としている人の姿が、だんだん化け物みたいに見えてくるの(超失礼ね)。その狭間で混乱して1人で寂しくなったり「みんなバーロー!!」って暴れたりしたあと、「ふう、気が済んだ」って立ち上がって黙々とまた調整を繰り返す。

 

だってそりゃ、適度に自分を濁したまま、もしかしたら狂ってるかもしれない社会に適応する選択だってあるんだと思う。だけどそれは絶対いや。バランスとることはしても、染まることはしない。だって世界に対して敏感になることの、良さは、不便さを上回るのを知ってるから。冬至を過ぎた後の、生まれたての太陽の輝き。その光を浴びた風の軽やかさ。去年のそれより、今年のそれは、まるで粒子の粒が喜んでいるのが伝わるほど、ドラマチックだ。とりわけ京都の、次元を幾重にも含んだ空を、一気に串刺しにする光。強いなあと、感心する。美しいものを身体が覚えたら、もう戻れない場所だってあるよ。

 

だからその都度、食事から時には住居に至るまで調整してきた。こちとら命がけなんだよ。生きるため、もっというと自分を生かすためなら、私はなんだってやる。試しに五分付き玄米を一気にオール玄米に変えた。身体にとって必要だったのか、驚くほど美味しかった。バランスを取るために肉は食べる。夫の勧めで、万年筆を買った。インクは、「深海」と命名されたこっくり深いブルー。美しくて、身体の一部になる。ちょっとずつ、手書きに変えていく。それだけで癒されるものがあった。

 

「治す」と決めたら引きはよくて、相性のいい整体、お寺の境内にある天然温泉、漢方医のいる病院が近所にあったりして、まるで連携プレイみたいに原因が解明されていき、どんどん調子は良くなっていった。私は私で、どういうパターンで右腹の痛みが増えるのかを日々検証して、「あ、怒ると痛い」とか、「夫をコントロールしようとするとここが詰まる」とか、観察してみたり。

 

いっそ、もう全部忘れてぐうぐう眠りまくったり。

 

それでだいぶ楽になって、つい「よっしいけるべ」と思って図に乗って、小説の続きに手を出してみた。一気にまたお腹が痛くなった。なんていうの、感情がグオオ、って掘り起こされると、肝臓の裏あたりが小爆発したみたいに痛み出して、「あーこれ泣いた方が体にはいい」とぼうっとしながらも筆を進めるんだけど、だんだん上半身が痙攣し出して、いってえ!もうギブ、みたいな感じだった。

 

翌日、たまたま訪れた宇治上神社でおみくじ引いたら「いまは休め停止!」だってさ

 

はー。なんだか七転八倒しながら、書くことを根本的に学ばされてる気分だ。なんか書いていて気づいたんだけど、私何かがパワーアップしてないか? 感情の量が増して、容れ物の身体が耐えられないみたいだ。感情に殺されたらウケるなー。自分の体内に、明らか暴れ馬みたいなのがいる。飼い慣らし方が全然わかんない。というか、なんかもう色々ハンドリングがわっかっめーー!

 

書いたらちょっと気が済んだぜ、バーロー。。

 

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昨年登った剣山。すごい霊山だったなー。そうだ山を登ろう。。