弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

オフライン、夏

夏になると、暑さに弱いうさぎのぽこを新潟・魚沼の実家に預ける。んだけど今年の京都の暑さは異常らしく、クーラーなしで寝られない状況に心が折れて予定を早め、一家で避難することにした。

 

まずは東京を目指した。南阿佐ヶ谷の「らびっとわあるど」にてぽこちゃんを里帰り(ペットホテル)させ、真利子家にて一泊。夜更けまであれこれ語り合う。創作について夫妻に聞く。監督は映画作りの経験を、しゅさんは今の身体からくる実感をそれぞれ話してくれた。なんだか気が楽になる。いい夜だった。

 翌日、鈴木家のおばあちゃんおじいちゃんの法事に参加する。道中、夫と大げんかの打ち合いでボロボロになって微妙な遅刻。だけど迎えてくれる顔ぶれが、こう改めて見ると本当に親戚みたいで、心の真ん中の栓がふっと抜ける。「これもおばあちゃんがくれたご縁かな」といつも以上に張り切って、坊さんのお経に続いた。

 

集まった中には私達以外にも、ほぼ親戚なんだけど血縁ではない、みたいな人たちが何人かいる。これまた「久しぶり」とあいさつしながらお互いを親戚みたいなもんだと思ってる。鈴木家は一種のパワースポットで、その時々のご縁が吸い寄せられ、不思議なドラマが展開したりする。こうして京都から訪れてみると、前より親戚の感が増した気がする。法事のあと、東京タワー下の「うかい亭」でお豆腐三昧ヒャッホー! 和室に最後の晩餐みたいな横長のテーブルがあって、真ん中に鈴木さんが座り、みんな着席していく。麻実子さんが息子くんに「どこに座るの?」と聞くと「なおちゃんと弥恵ちゃんの横がいい」とのこと。あと何回そう言ってくれるのかなあ。私は君にいつまでも指名されていたいよ。

 

その日のうちに新潟へ。道中、母から「夜はジャージーうどんでいい?」と連絡があって、そもそもなんの料理なんだろうと疑問に思いながら「なんでもありがたいです」と返事。トマトとひき肉が盛られ、めんつゆに豆乳を足した謎の冷製うどんを用意して待っていてくれる。意外と美味しい。

実家は母が1人暮らし、1LDKの狭いアパートなので、寝室にすでに敷かれていた布団に、私と夫と母の三人で川の字になって寝る。夫も母もたまたま減量中だったからか、いびきをかかなくなって私もぐっすり眠れた。外から上がってくる夜風がカーテンを揺らす。鈴虫の声が心地いい。流石に魚沼も猛暑だけど、やはり夜はクーラーいらず。朝方になるとちょっと寒いくらいで、今後も夏はこっちに帰ってこようと思った。涼しさにぽこもご満悦。

 

夏だ。海だ山だとはしゃぐ合間に仕事をして、夜10時には寝てしまう。地元が温泉街なので、夫はあちこちの日帰り湯に毎晩浸かりにいってはゆでダコちゃんになって帰ってくる。ここ1週間、仕事で使う以外はオフラインにしてた。2018年が一区切りして、後半に移行していく合間の体内調整というか。暦の上ではとっくに後半戦だけど、身体の中ではこの1週間くらいが移行期だった気がする。なんか本当によく遊んだし働いたし、眠った。

 

あらゆることが遠くなった。引き潮みたいに。これぞ夏の魔法。一瞬一瞬が近くて遠い。近くにあるのは家族と入道雲と青い田んぼ、先祖の墓、山の神社、友人、前より物理的距離は離れたのに、なぜか近くなった気さえする大切な人たち。大事なものはそんなに多くない。気の抜けたスイカとか、付き合いのための付き合いとか、中途半端はいらない。

 

大事なものを大事にしていくために、あんまり多くを持ちたくない。

夏になるといつもそう思う。日が濃くて短くなるからかな。こっちはもうひぐらしが鳴いてる。

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十日町にて。トリエンナーレが始まるちょっと前に