弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

朝のさんぽ

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帰省中の朝。

 

朝、最初に起きるのは母。7時には着替えて職場へ行き、「自分でやるから」と言ってるのに私と夫ぶんの朝食が用意されている。母の「習慣」に「ついで」が重なり、こうしてなんでもないことのように巻かれ、白い皿に並べられている卵焼き。母は女手一つで娘2人を育てた。60に近づいた今も、当たり前に仕事をしてご飯を作る。それだけの筋力を、私も母の歳まで持ち得るのだろうか。

ニャーーー

んて殊勝なことをうつらうつら思い、私たちが起きるのは8時ごろ。夫が先に起きていることもある。昨日、うさぎのぽこちゃんを「けもこ」に改名した。おそらく50度目くらいの改名だが浸透するのかどうか。母と夫が「けもー」と元ぽこに話かけ、何か笑っている。元ぽこが反応せず仏頂面を返す光景が浮かぶ。私は二度寝する。

 

8時過ぎ、起きていたはずの夫がまた布団に潜ってくる。気づいたら私は夫を組み伏せて全体重をかけ、夫は「うう」と呻いている。寝ぼけていても闘争本能というのか、ちょっかいを出されるとマジレスパンチしてしまう私の拳は健在で、下手なプロレスごっこをしているうちに体温があがる。そのまま寝だした夫を尻目に着替え、日焼け止めを塗っていると、最近デコピンを覚えた夫によって、ひたいに赤い筋が入っている。畳の香りと外からの夏草の匂いが混じる寝室で夫のケツを揉みしだき、割れてるはずの尻に「真っ二つにすんぞ」と脅しをかけ、夫が一瞬「どういうこと?」とマジレスしてくる。うっさい!頭が回らん!と踵を返して家をでる。9時までは散歩の時間。京都でもだいたいそう。

 

母の家のいいのは、真裏が山になっており、木漏れ日の差し込む林が広がっているところ。山道と言ってもコンクリだけど、山際とあって野草の力が強い。隙間隙間からオオバコやツユクサがグイグイ伸びていて、思わずじっと見入ってしまう。人間なんぞがいなくなれば、こんな道路など引き剥がされ、列島は緑に覆い尽くされるのだろう。山に登ったり木々に惹かれる人間には、つきものの思考だろうなと、一瞬自分の脳みそを観察する。お前は誰だよ。お前は誰目線だよ。土だけじゃ生きていけないだろう。でも土なしでは生きてはいけないだろう。

 

坂を登ると熊野の神を勧請した神社があって、そこに差し掛かるとき、いつも正面にある木の葉が、手を降っているように揺れる。しばらくぼうっと立ち尽くして、なんだか笑えてきたりして、そのままお参りに行き、ついでに参道の階段を一往復して身体にエンジンをかける。数えたら120くらいあるが、実際はもっとある気がする。ものを数えると、途中からリズムに乗っ取られて、ただリズムを数えていたような気がしてくる。私にはものを数える才能がない。

 

きた道を戻る。しばらく歩いていると、必ず、不思議な重たさのある風が、ブワッと正面から吹いてくる。必ず。思わず、足を止めてしまうほどの、それは重力がある。手に触れると、まるで水を堰き止めたような、形ある力が残る。

 

さっき神社で、手を合わせた、祈りが届いた。

 

足元には、ぽこちゃん、じゃなかった、けもこがよく食べる葛の葉が生い茂っている。それをお土産につんで帰る。けもこはそれをよく食べた。

 

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