弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

台風と京都と、日がさす糺の森

台風が近づく前日あたりから妙に浮遊感があって、いつものカフェでPCを開いてもどうにも落ち着かない。集中力が途切れるばかりで、結局すぐに帰宅した。翌日も朝からぼんやりした感じがあって、低気圧のせいだろうか、なぜだか早く起きてしまった。

 

この日は仕事でお世話になってる人が京都出張中なのでお茶する予定だったのだけど、昼過ぎには直撃しそうとのニュースを見てキャンセル。メッセージのやり取りの中でお守りが欲しいとのことだったので、まだ晴れているうちにさっと車で上賀茂さんへ。鈴を買い、ウエスティン都ホテルのロビーに預ける。本人とはちょうど入れ違いになったが喜んでくれたみたいでホッ。家に着く頃には、南からの風が強くなってきた。

 

雨が降る前にと買い物を済ませ、ついに雨が降り出した。と同時に今度は全身の関節が痛み出して、風の勢いが強くなるにつれて発熱し出した。夫も仕事をしながら「関節が痛い」という。私はベッドに潜り、唐突な寒気と発熱でどうしようもなく、いまにもちぎれそうに枝を揺さぶられる窓辺のモクレンが倒れないことだけを祈って、気づいたら寝ていた。夢うつつに、天井の上に大きな渦のようなものがぐるぐる回って、それによって体が押しつぶされそうな感じだった。汗をぐっしょりかいて、何度か目を覚ましてはまた寝る。外はひどい音で、震度3の揺れを何度も感じる。アパートが揺れている。根こそぎ持っていかれそう。暑い。身体が熱い。

 

台風が過ぎ去った後も、節々の痛みだけが残って、結局1日じゅう寝込んでいた。朝起きると、ネットもテレビも通じなくなっていて、夫は慌てて電波を求めて外へ仕事をしに行った。テザリングでPCからネットを開くと、関空が冠水したニュース。まじか。6日のフライト、もうだめじゃん。まじか。もともとセールのチケットだったのでこれは悩みどころだが、私は何だか必ず行くような気持ちがそれでも冷めず、そういえば台風の前日に入った臨時収入を思い出し、それを追い風に夫を説得。

手がとどくエアチケットは成田の10日の便。となると9日は前泊したいね、東京、鈴木さんちに連絡。9日の食事会にも混ぜていただくことになり、なんかこういう運命だよねえと夫と笑う。原稿の修正対応やらハワイ調整に時間がかかり、気づけば夜20時。遅い夕食に肉じゃがを煮て、サラダを作り、味噌が切れたことに気づく。

 

今朝は北海道地震のニュースで起きる。地震は、起きて1日経たないとなかなか被害状況がわからない。正確な震度も、後になってわかることが多い。テレビをきり、今回の台風でネットとテレビが切れたことを踏まえ、ラジオ購入の話し合い。その流れでラジオ体操を夫婦でして、それぞれの1日。今日はもう体の調子がいいので、ふと外を歩く。近所の並木道の木がいくつか倒れ、すでに撤収され何もなくなっていた。そこだけ空が抜けている。嫌な予感がして下鴨神社糺の森へ急ぐ。遠目に、森から一本だけグンと伸びた一番のっぽの木を探すが、どう見てもない。ない。ああ、そうか、それほどの威力だったのか。

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境内に入った途端、ツンときつい葉の香り。水気を失って、蒸したような濃い匂いがする。夏、最も葉を厚くする頃の木々がそこかしこに倒れ、業者や神社の人らによって撤収作業が行われ、参道に葉や枝がかき集められて小さな山がたくさんできている。糺の森で最も植生が古いエリアは、すでに立入禁止となっていて、樹齢のたかそうな木が横倒しになっている。空がうんとひらけて、森が明るい。

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思わずポケットに入ってた千円札を突っ込む。

 

他の参道も一部が立ち入り禁止となっていて、近所の人らだろうか、みんな写真を取りにきていた。ロープの前で呆然と立ち尽くしていると、「奥さん、ここ通ってもかまんで」と声をかけられる。感傷的になってる自分を見られるのが嫌で、顔を背け、とにかく河合神社まで歩く。この辺りは木々が若く、とりわけもみじは無事だった。

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境内も綺麗だったけど、売店は閉じている。鳥居のあたりでアジア系の観光客が楽しそうに写真をとっていて、その姿に気持ちがホッとする。

 

いまこうしてブログを書いていても、今朝の気持ちの手触りがぼんやりしてしまって、ここまで書いて初めて、それは自分の中だけでちゃんと形にしないといけないことだったといま気づいた。人に向けて書く中で、取りこぼしている気持ちの輪郭がだんだんわかってくる。災害と呼ばれるもの。人間と自然。まだ言葉にはできない。

 

ただ、森が明るかった。それはまた新たな命の始まりでもある。

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追記:2

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本日、下鴨神社へボランティアにいったところ、参道も境内もすっかり綺麗になり、観光客もいっぱいいらしてました。立ち入り禁止区域はありますが、ほぼ通常通りに戻った感じです。嵐が過ぎ去った下鴨の空気は一層爽やかでした。

週末の募集の是非はツイッターでされるそうですが、直近の復旧作業としては7、8割済みとのことで、もしかしたら今日が最後だったかも。

てっきり落ち葉掃除かなと思って行ったら、普段は立ち入れない神殿の拭き掃除をさせていただいて、神社好きとしては、貴重な体験になりました。上の写真は本日のものです。

 

 

 

追記:1

下鴨神社でボランティアを募集されているそうです。私も今週中時間を見つけて行こうと思います。※ツイートは9月4日時点のものです。6日にいった感じでは報道された時点より復旧され、参拝も再開されているので、都度ボランティアが必要かどうか要確認を。

台風被害により、下鴨神社全域で落ち葉等散乱の為、参拝を中止しております。
一刻も早い復旧の為、ボランティアとはなりますが、境内清掃の御協力を皆様にお願いしております。
御助力頂ける方がおられましたら、社務所までお越し頂けますと幸いです。#下鴨神社 #賀茂御祖神社 #ボランティア

下鴨神社 (@kamomioyajinja) September 4, 2018