弥恵の「からだのかみさま」

東京→京都に移住したライター・弥恵(やえ)の日記です

ハワイ島と、怒り

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サンセットの残り火を眺めるわたくし



3日間の睡眠不足を経てハワイ島(ビッグアイランド)へやってきた。ホノルルからハワイ島・ヒロへの乗り継ぎ便のなかで、キラウエアと、マウナケアらしき山体を見た。夫は隣でぐっすり眠っていたけど、二つの山の頭を見ていたらすっかり眠気が飛んでしまった。思わず手を合わせた。噴火後のキラウエア、ロコは「ペレの怒り」という。富士山が噴火したら「木花開耶姫が怒った」と思うかしら。地中に蠢くマグマを平然と内包して山は佇む。なぜどちらも女神の名がついたのか。

 

初めての右側通行左ハンドル、夫はそれでも冷静にドライブしてくれて、日系人が築いた歴史を持つヒロの街を巡る。オアフのホノルルや、コナとも違ってリゾート開発されてないエリアで、風情のある田舎。日本人観光客はおろか、アジア人も見当たらないけど、お年寄りの日系人と何度かすれ違う。途中、見たことのない大きさのガジュマルがあって、水に打たれたようにしんとした気持ちになる。傍らには鳥居が立っている。英語が読めない。原っぱに横になると、空に亀裂が走った。密集する木の葉たちが、風に揺られ、その隙間に空が見える。ハワイと鳥居。

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芝生が刺さる

 

宿泊はB &Bなので、夕飯を買いにスーパーへ。旅したらまずはスーパーに行くに限る。ヒロの内側を覗いている気分。よくわからん中華9ドルをテイクアウトしたらめっちゃ美味しい。

 

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B&Bはヒロの郊外で、ネットで見つけたローカルビーチの近く、ジャングルの中にある。これまた日系人が建てたとのことで、中庭がなんと日本庭園。屏風まである。見たことのない和洋折衷。

 

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寝る。爆睡。夜中に起きたらものすごい星。日記を書く。東京での会話が音楽みたいに頭を流れて、それがハワイと繋がり、物語につながる。私には知りたいことがある。

 

宿主のモーリーンは、スーパーで見た現地の人々に比べ、ビックマザーではあるが筋肉質。乗馬好き。「郊外にある海中温泉に行きたいんだ」と言ったら「そこは溶岩で埋もれた」とのこと。彼女を包む柔らかい空気が一瞬ピリッとして、so sorry。その余韻が続く。災害と人。何かに触れた。モーリーンの口調が変わった。朝食後、夫に「お参りってなんていえばいいのかな」と聞くと「祈りだとprayだよね」。祈り祈りたいことってなんだ。

 

小説を書き始めて、体の中を探るうちに、凝り固まってなかなか割れない岩のようなものがあるのを感じる。まだあるんだこういうの。東日本大震災があった年から、そう言ったあらゆる岩をくだいては、布団に顔を押し付けて泣き叫んだ。拳で畳を殴った。胸が痛くてちぎれるかと思った。ヘトヘトになるまで話し合った。もうやりきったはずなのに。

 

それでも終わらない。生まれてからこれまでの、過去を正確に刻むのは困難だ。私はいつどこで、ごまかすように過去を上塗りしたのだろう。

 

人に恐怖を感じる時、いつもちらついている光景がある。30をすぎて、怖いものを「怖い」と言えるようになった。そして最近になって、恐怖で身が硬くなる直前に、息が浅くなる前に、燃えるような怒りが全身から湧き出すのを、内臓が堪えているのに気づいた。私もまた山のようにあるのなら、平然と何かを溜めこんでいるのか。なぜあの短冊を取り下げてしまったのか。「こういう自分でなければならない」と、課してしまったのか。

 

I just want to see Pele.

 

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何気なく撮ってくれてる写真に、夫の愛感じるぜ